春の憂鬱

街はもう春を着て
色付きを待つ萌え黄端

ミラーの向こうに
俯くキミは
誰の歌も聴こえない
何の色も許さない

街ゆく目には
春の菜映り
冴えた音が往来する

ガラスの中のキミだけが
未だ冬服を纏い
春風の隙間もない
  ただ 頑なに音を消し
ただ 頑なに色を消す

棘と蜜は
同じ花芯を包む鎧

打つものと
守るものと
許されるものまでも
すべての言葉を
謎めいて施錠する

諦めの夕暮れが
すべてを包み込むように
街を覆いつくしていった

もう一度振り返ったそこに
キミの白いため息を見た
その瞬間 新たな喧騒が
それを呑み込んでいった


2006/3/9







まぁーる

まぁーるいココロに
お日さま降りる
まぁーるいココロに
恵みの雨降り
まぁーるいココロに
キミの笑顔が降りてくる

まぁーるいココロ
守ってくれた
キミの姿見えなくて
涙隠すは
道化師柄の笠の中

まぁーるいココロで
悲しみを
菜の花色の袂の中へ
まぁーるいココロで
憂鬱を
星型模様の帯留めに

まぁーるいココロに
天使が降りる
まぁーるいココロに
白き光舞い
まぁーるいココロに
普遍の月が咲(わら)うでしょう


この詩の最初の6行は友人のサイトにある数日で消える掲示板に
即興で綴ったものですが管理人さんが消えないようにと
別の場所に移してくれました
その後 下の行を書き添えました


2006/2/23

picture by Atelier N







遥かな誓い 

あなたの笑顔に逢いたくなると
いつもこの場所まで来てしまう
まだシフォンの(きぬ)さえも
乾いていないというのに・・

ここに来れば
きっとあなたに逢えると信じてた
だからいま・・どこにも
あなたの姿がないことが
わたしを不安の淵に落とす

見えない時間(とき)
探りようのない心流(こころ)の中で
押し寄せる悲しみは
私を羽交い絞めにする

あのとき・・
あなたの(こころ)を見ないふりの
哀れな作り笑いを
ほんとは気づいていたのね?

あのとき・・・
いつかこの時流(とき)が止まり
ふたりの時計が
別の時間を打ちはじめること
知っていたのね?

いま わたし・・・ひとり
あなたが居ないこと
体中で受け止めようとして
埋められない時空(そら)
彷徨っているの

いつかは・・
あなたのこと
笑顔で思い出せるときが来る
時流(とき)がわたしに
変わることを教えてくれる

そのときまで
無理に忘れなくてもいい?

いつか・・
笑ってさよならって言うから
そのときまで・・・
無理に忘れなくてもいい?


2006/2/17

photo by 月とサカナ







覚えていますか

覚えていますか
出逢った頃のこと・・・
幼い瞳で君を見ていた女の子のこと

生まれたばかりの愛が
密かに鼓動を打ち始め
赤く染まった雲に抱かれた公園で
ゆっくりとひとつ ブランコが揺れた

うまく話せない唇はもどかしげで
うまく笑えない睫は涙をためたまま
暮れなずむその日
ひとり佇んでいた女の子のこと

いつか 気づいてくれる?
いつか 君の高さに届くことできる?

あの頃はまだ 
伝える言葉も
勇気も持たなくて
眩ゆいあなたの影だけを見つめてた

あれから・・
いくつ季節が行き
いくつ茜雲を数えただろう

覚えていますか
あの頃の私を
幼な過ぎた小さな小さな愛を



2006/1/15

photo by ひまわりの小部屋







冬の交差点

雨混じりの雪が地上を濡らす

駆け出したい衝動の犬は
ビルの窓から
恨めし顔で表を眺め

仮面被った猫は
灰色の空低く
秘密めいた一瞥で
足早に路地へ消えた

空から落るときは
涙の形
土に溶けるときは
溜息の形

夢幻が交叉する
白い街・・・
他人の影を無頓着に踏みながら
人等が通り過ぎてゆく

行き交う肩に積もる
夫々のストーリー
足元に零れる
壊れそうな雪影たち

行き先を見失った迷子が
音のないこの場所で
震えながらいつまでも
立ち尽くしている


2005/12/9

photo by RELISH







決別

霧とも靄とも知れない
薄色(うすいろ)の朝を通りぬけ
思いの彼方へ
終局(さいご)の旅に出よう

好き。。。
そう囁いた耳元に
レーシーな言葉が
笑みを()れた

碧き目覚めの公園は
人影に紛れて 小鳥が2羽
透明なハーモニーを()れた

好き。。。
もう一度 呟いてみた
緩めた頬 心を真白に
過去人(あのひと)を見つめた

もう決別できる
今この時を呼吸したら
すべてを忘れることができる

あと少しだけ
瞑想(あそ)んだら
もう少しだけ
(あそ)んだら・・

きっと
力強く・・
新しい扉を開いてみせる

その向こうには
少しだけ口角を上げたわたしが
微笑んでいるはずだから


2005/11/9

photo by Fuzzy







帰らない空・・・過去を刻む時計

遠くまで行ったよ

帰らない空を
帰らない雲を
どこまでも追いかけて

遠い君に何を言っても
届くはずもないのにね
それでも追いかけたんだ

あの日々が帰らないこと
もうとっくに気づいていたけど

すべてが変わってしまったことも

たったひとつだけ・・・
変わらないもの
それが君への愛だったなんて
今更気づいても・・・遅いよね

あの日
君を傷つけたくなくて・・・
(それは綺麗ごとでしかないのに)
付いた嘘は 結局
君を悲しませるだけだった

君は
気づいていたんだろ?
あれが嘘だってこと

なのに・・
黙って聞いてくれた
黙って去ってくれた

だからもう
振り向いちゃいけないんだってこと

わかってるよ
わかってるんだ

あの大切な空(とき)は
  二度ともう ここに
戻ることはないから・・・


2005/10/21

photo by ivory







永遠への道 / あなたへ

もしも永遠があるならば
それは  きっと・・
あなたへと通じる道でしょう

優しく降る雨音の
一粒ひとつぶが
あなたの音色に変わってゆく

今この時
虹色の雨が謳う
落ちながら深く・・・
優しく 歌う

もしも永遠があるならば
それは  きっと・・
あなたと過ごした時間でしょう

白い喉の渇きも
夏の煉瓦色した熱も
一瞬に癒してくれた
優しい水となって
守ってくれた

忘れない・・
大切な日々
忘れない・・ 安らぎの時間(とき)
ひとつ・・・
ひとつ・・・

夜の帳(とばり)の中で
暁(あかつき)の中で
いつも
優しいあなたを思い出す

永遠は
あなたからの
掛け替えのない贈り物

だから・・・

永遠は
あなたへと続く
ただひと筋の・・・
私だけの 大切な 大切な道


2005/9/16







夕凪のソネット / ただいま

夏の帳が降りるころ
夕凪に誘われるまま
初めてこの場所に立った

あれから
秋が往き
  冬も往き
春の陽射しは
満ち足りた愛の調べと
緩やかな時の流れをくれた

いま夏が
三度目の空に映りながら
素知らぬ顔で
わたしを迎え入れてくれる

すべてを置き去りにした
懐かしいこの場所に
わたしはついに戻ってきた
もう迎えてくれる人もいないのに・・

この扉は
二度と開けられないと思ってた
忘れようとすればするほど
愛しさだけが増していったけど・・

いまあの日のソネットが
耳をくすぐり
髪をやさしく撫でる・・

あの時のままで
   そこに 
ぽつんと
わたしがいる

ただいま


2005/7/12







たとえば・・・

たとえば
雨の街角・・・
紫陽花
ふと 遠い日のブルー

たとえば
お昼休みの公園・・・
噴水に跳ねる子等
ベンチの白と鴇色の歓声

たとえば
午後の窓
迷い犬の路地と
行き場のないアクビ

たとえば
夕映えの木の葉
茜色に染まる安らぎ

たとえば
今宵の星雲
そこから
降り注ぐだろう慈しみ

どの時間  どの場面にも
君がいそうなのに・・・
いないという  現実

砂に描かれた絵を
心細げに
風が見つめている


2005/7/4

photo by NOION