無情の波
(vol. 107)
冷たい波が
わざとらしいリズムで
岸に打ち寄せる
すべての想い出を攫(さら)って
遠い海へ連れ去ろうとするように
舟はすでに沖へと漕ぎだし
青い岩の上で私は
不透明に置き去りにされた
打ち寄せてはひとつ
押し返してはひとつ
想い出が白く泡に変わっていく
聖ら過ぎる月が
冷酷に輝きながら
暗い海に落ちていく
君は振り返らないまま
遠くとおく
波とともに
知らない海へ消えていった
私は・・・
今日もまた
見えない舟を追いかける
波は無情に鳴きながら
いつかまた
この海を灰色に染めていく
2004/8/4
*Thanks*
photo by RELISH