一夜 (ひとよ) (vol. 104) 2004/7/23   繊細な新月と
零れそうな星たちが
群青色の街並を淡く染めあげる

セピアのベンチに影ふたつ
小さい夜に魔法をかける恋人たち

甘んじて・・・
顔なじみの時計が
いつもの半分の速さで秒を刻み
人見知りの夜明けは
恥じらい顔で優しく退く

恩情で・・・
無口な闇は
迷路を抜けて月の下まで歩み寄り
大人な夜は
不安を払いベールを纏う

ありがとう
寛大な心を

あなたのおかげで
永遠と呼べる幸福を
きょうの一夜(ひとよ)に封じ込め
魔法のトランクに詰めました

たとえば
神様がこの恋を
お許しにならなかったとしても
罪深い私が
悲しみに揺れることはありません

それどころか
私の心は
満たされたままに
新しい朝を迎え入れ・・

希望を摘めたトランクの
小さな穴に鍵をかけ
時が往き
許される日を待ちましょう
*Thanks*
photo by La Moon